2021年、デジタル地図について考えたこと

ベクトルタイル Advent Calendar 2021に参加しています。デジタル地図、位置情報の会社にCOOとして参加してから1年、勉強になったことを書きました。役に立つ技術、ビジネスの話は少なく、私がデジタル地図をどう理解しようとした一年だったのか、結果として来年どんな年にしようかと思っているのかをまとめました。

目次

遠くにある山は青く見えるとは知らなかった!

遠くにあるものは、遠ければ遠いほど、青色に近づいていくと知り驚いた。背景グラフィッカーの吉田誠治さん (@yoshida_seiji)の以下のツイートが分かりやすい。

光が散乱し、私たちの目にどう映ることになるのかを示してくれている。
ひとつひとつの画像を開いてよく読んでほしい。

下に貼り付けた何枚かの画像は、私が住む男木島から見える風景を iPhone で撮影したものだ。たまたま山が写っているものもあれば、山の色が青くなっているのを観察しようとして写したものもある。海の向こうに山々があるとき、濃い緑色が手前にあり、遠くに行くと青白くなり、濁っていくような感じがする。自分の目で見ると、さらに青く見えることも多い。

遠くの山は、手前の山よりも青みがかって見えるという風景をこの5年以上、何度も見てきれいだなーなどと思っていたのに、空気遠近法のことを読むまで、山が青く見えていることに気がついていなかった。知ってから本当かと思ってよくよく見てみたら、遠くの山は青かった。見ているようで見ていないものだ。

人類がそれに気がついて、絵に描いたのはずっと前のことだ。

Leonardo da Vinci, Public domain, via Wikimedia Commons
Museo del Prado, Public domain, via Wikimedia Commons
ラファエロ・サンティ - Galleria Borghese, パブリック・ドメイン

1枚目がダ・ヴィンチのモナ・リザ、2枚目はダ・ヴィンチの弟子が同時期に描いた模写とされるもの、3枚目はラファエロ・サンティが同じ構図とポーズと構成で描いたもの。模写やラファエロのものがより分かりやすいが、どちらも背景の山の色が、遠くに行くほど水色になっている。空気遠近法と言う。

下に貼り付けた画像は、Mapbox GL JS というデジタル地図の現在を代表する Javascript ライブラリの比較的新しい機能、Fog Effect(霧の効果)だ。

Add a configurable Fog effect by karimnaaji · Pull Request #10564 · mapbox/mapbox-gl-js

奥行きをどう表現しているのかをよく見てほしい。

奥に行けば行くほど、霧がかかっており、これらの画像の奥に映っている山の色のRGB(ディスプレイに映し出すRed, Green, Blueの配合)を調べると、使われている色は赤や緑よりも、青が多い。空気遠近法だ。

見たい、知りたい、わかりたいという欲望の爆発

ルネサンス期の画家たちは遠くの山が青いことを知っていたし、遠くの風景を遠くらしく描くために青の顔料を使った。それまで、神話や宗教の主題を表現してきた画家が、現実の世界をよく見て、写し取る方法を作りながら理解を深めていった迫力を、モナリザの背景を見ると、別に好きな景色じゃないけど、感じる。

見たい、知りたい、わかりたいという欲望の爆発

塩野七生の『ルネッサンスとは何であったのか』

ルネサンスについて「見たい、知りたい、わかりたいという欲望の爆発」と塩野七生が書いている。世界がどうなっているのか知りたくて、ものを作ることで理解を深めようとした人々の試行錯誤の過程がルネサンスであるという本だ。次の例も、ルネサンスを追いかけるような絵とデジタル地図についての話。

光をあてて、目立たせる

Antonio da Correggio, Public domain, via Wikimedia Commons
Francisco de Zurbarán, Public domain, via Wikimedia Commons
iPhone にこういう写真を撮る機能があります

1枚目はルネサンス期のイタリアの画家アントニオ・アッレグリ・ダ・コレッジョによる『羊飼いの礼拝』。2枚目は、1633年頃のスルバラン『壺を描いた静物』、3枚目は私がふざけている画像。共通点は、暗い中に光があたって対象をより目立たせていることだ。こういう書きかたのことをキアロスクーロ法(明暗法、陰影法)という言うそうだ。

これらは、山の青さに気がつき、その青さを写し取りたいという探究心から一歩進んでいると思う。目立たせたいという意図のために、光を描くという技術を使っている。キリストの誕生、静物の質感、私のバカさを目立たせたいから、光の当たり方、ものの光り方を変えている。

下に貼り付けたツイートは、日本全国の郵便局を光らせた地図だ。都市が明るく、田舎は暗い、でも日本の形は見えるほど万遍なく郵便局があることが分かる。

にゃんこそばさんのタイムラインはいつもおもしろい。郵便局の位置だけを一度にまじまじと見ることができる時代。

地図の上に目立つものを配置して何かを表すために、対象を明るくするのはキアロスクーロと発想が同じだ。下のスクリーンショットは、deck.gl という地図上にデータを可視化するための Javascript フレームワークのサンプルページ。

DECK.GL はデータの地図可視化用のフレームワーク。光っている。

Top 10 Map Types in Data Visualization | by Lewis Chou | Towards Data Science (データ可視化の地図10タイプ)では、ポイント地図、ライン地図、エリア地図、フロー(流れ)地図、ヒートマップ、時間と空間を同時に表現する地図などが紹介されているが、基本、みんな光らせている。

地図も、人間の世界認識の再現だ!

Oxford Languages より、Google が図式化

map という言葉の語源は、ラテン語を起源として、mappa mundi (sheet of the world) である。「1枚、一葉の世界」といったような意味だ。sheet の動詞、shoot は、 to project 「前に投げる」から転じて、plan (「計画」に加えて「地図」や「施設の案内図」の意味もある), preliminary design (事前の設計), tabulated statement (表として情報を提示したり意見を表明すること) とある。

Geolonia はデジタル地図と位置情報の会社だが、そのミッションは「この世のすべてをAPI化する」である。その会社から map という言葉を見ると、map は人間が世界を観察し、意図を持って設計し、情報をひとつにまとめた成果物であるという語源がしっくりくる。世界を認識し、表現に落とし込み、まとめあげたもの。日々、業務でデジタル地図とは何かを考えているとき、この感覚を得ることが多い。日本語の「地図」は「地面の図」という漢字からくる語感があるが、考えごとをするときには、map にある「世界の写像感」をベースに考えるといいことも多そうだ。

歴史上の地図を振り返り、人類の世界認識を辿ろう

地図が人間による世界認識の写像であることを念頭に、過去の地図を振り返ってみる。

バビロニア地図

人類の最初の地図はどんなものだったか。

British Museum. Object Number: 92687., Public domain, via Wikimedia Commons

紀元前7世紀ころに作られたこのバビロニア世界地図は、世界最古の世界地図として知られてきた。

バビロニアはメソポタミア文明を代表する都市の1つ。上部には楔形文字で説明文がついていて、この地図が何を表しているのかは、おおむね解読できている。

二重の円の内側にはユーフラテス川、中央やや上に都市バビロンがある。他の都市も小さな丸で描かれていて、方角と位置関係はまあまあ正しい。

ただ正しいだけではないところが面白い。二重の円は海で、その外側にはトライアングル型の想像上の陸地がある。壊れてしまうまでは、7つのトライアングルで囲まれていたらしい。

この時代にはよく知られていたペルシアやエジプトなどの巨大な勢力は描かれていない。バビロンを中心にした神話的な世界観なのだ。真ん中に空いている穴は二重の円の中心になっており、コンパスが使われたのではないかと思われる。世界を円形に捉えることを、円盤型世界観というそうだが、中心の自分たちのことはある程度正しく描き、無視したい国やよく知らないことは図形的に処理してしまっている。

当時の文明の発達具合からすれば、もっと正確で戦争や土地の管理に使われた地図もあったことだろう。

(ちなみにGeoloniaの社名の由来はバビロニア、ロゴのモチーフはバビロニア地図です)

(2022年4月、初期青銅器時代の末期, 紀元前1900 ~ 1640年ころのものと見られるサン・ベレクの石版が、実は地図だったのではないかという発見があった)

プトレマイオスの世界地図

こちらは、コロンブスがアメリカ航海をする10年前に描かれた地図。

Lord Nicolas the German (Donnus Nicholas Germanus), cartographerJohann the Blockcutter of Armsheim (Johannes Schnitzer or Johannes de Armssheim), engraverPtolemyJacobus Angelus, translator, Public domain, via Wikimedia Commons

左側にヨーロッパ、アフリカ大陸は赤道付近まで、中央はアラビア半島のあたり、右の方に行くと、途中でちぎれているがインドがあり、マレー半島までがカバーされている。アメリカへ大陸の発見(1492年)の前であり、当時航海され、認識されていた範囲が、可視化されている。北のイギリス、ノルウェーのあたりで海が地図をはみ出しているのは、まっすぐに線を引くと北のほうが狭くなってしまい、自分たちが認識している海の広さと合わなくなってしまったためだろうか。

この地図は、ニコラウス・ゲルマヌスという15世紀の地図デザイナーが描いたもので、プトレマイオスの世界地図と呼ばれている。プトレマイオスは、紀元1世紀頃の古代ローマ時代、エジプトのアレクサンドリアで活躍した知識人である。地図を書いたニコラウスとは、1400年の隔たりがあるが、二人の関係がおもしろい。

プトレマイオスは『地理学(ゲオグラフィア)』という本を遺していて、天体観測によって地理的な位置を記述したこと、緯度と経度の概念を持ち込んだことが人類への最大の貢献だ。『ゲオグラフィア』には、プトレマイオス自身が描いた付録の地図があったそうだがそれは残っていない。ところが、本文にその8000の場所についての緯度経度と知識が書かれている。ニコラウスは、その緯度と経度を手がかりに、後世の人々が書き起こした地図のひとつが上の画像なのだ。緯度経度がついている情報の束から地図を書き起こすのは、現在のデジタル地図の描き方とまったく同じだ。

地図を描くことは、世界を描くこと

さて、上のプトレマイオスの世界地図を拡大してみると、12人の神がいて、一人ひとりに名前がついていることがわかる。

この画像はそれぞれの名前を書き起こしたもので、Classical 12-wind roseと呼ばれている(12の風の薔薇。薔薇はConpass Rose = 羅針盤から)。

現代の私たちは、東西南北の4つの方向、北東、南東、南西、北西の8方向、さらに分割した北北東などの16の方向で方角を表現しているが、このころは12だったのだ。

青い文字がギリシア語で、赤はラテン語
Walrasiadvectorization: Own work, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
十二支の方位盤 (大阪天満宮)
Oilstreet, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

こちらは、大阪天満宮にある十二支の方位盤で、北から順番に、子・丑・寅・卯と方角を示すのが十二であり、12 wind roseと同じなのがおもしろい。

もうひとつおもしろいのは12人の神々の中でもメインキャラクターとして有名なのは東西南北を示す4人の神様(ボレアース、ノトス、ゼピュロス、エウロス)であり、これも中国の四神(玄武、朱雀、青龍、白虎)と同じだ。

(もしかすると、この十二方角の起源はもっと昔にあり、それがヨーロッパと中国に伝わったのではないか、しかも生み出したのはそれは12進法を使っていたメソポタミアなんじゃないかと思っているのだけど、インターネットで色々探した限り、見つからない。)

方角のような基礎的な感覚が違っていたのは不思議な感じがする。

日本史上の地図

日本に残されている地図で、古代、中世の人々の世界観を推し量る地図が少ないのはちょっと寂しい。

日本の史料で発見されている地図は、平安初期、740年ころの「国図」への言及が最初のようだ。続日本紀に「天下の諸国をして国郡図を造進させる」という記載があり、そのころ認識されていた国々の地図があったそうだが現物は残っていない。

画像としてみることができる最古のものはこの行基図で、おおもとは7世紀に作られたのだろうがこれも現物はない。この画像は江戸時代に書き写されたもの。北は津軽、南は薩摩までが書き込まれており、佐渡ヶ島も関東もカバーされているが、7世紀ころにどのあたりまでが認識されていたのだろうか。

天保年間に作られたとされる大皿。京都が中央にあること、円盤であること、方角を示すのに十二支が使われているのがおもしろい。
Los Angeles County Museum of Art, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

世界、日本の古代、中世の地図を見るとこうした空間の把握方法をしていた時代が長くあったことが理解できる。紙の地図やGoogleマップのような地図がいつでも見える世界観とはだいぶ違う。その後、正確な測量と紙の地図の時代が来て、今のデジタル地図技術の開発とサービス化の時代に移っている。扱われるデータの量や想定されているユースケースに触れていくと、世界の認識方法が変わろうとしている感覚がある。だとすると、地図を作るとか地図制作の道具を揃えるという今会社でやっているようなことについて、どう考えればいいのだろうか。

支配する地図、戦争地図、ウソをつく地図

地図にあるリスクについて。人間が地図を作るときには、目的があり、技術があり、作りての意思が入り込む。

国内に現存する最古の地図は東大寺領地墾田図とうだいじりょうこんでんずだ。画像の引用の要件が厳しいのでリンク先でマジマジ眺めてほしいのだが、751年に描かれたこの地図の目的は徴税だ。

画面中央に条里と呼ばれる土地区画を示す方格線を引き、それぞれの枡目に地番、土地の種目、耕作面積などを墨書する。

重要文化財|東大寺開田図|奈良国立博物館

地籍図や土地台帳を整備して税金の計算をするのは現在も同じだ。

次の何枚かの写真は、男木島の、かつて郵便局だった古民家から出てきた『歐洲戦争 英國海軍戰史 自開戰前至フォークランド沖海戰』という本だ。地図が多く含まれている。

第一次世界大戦で行われた海戦を解説したイギリスの本を海軍大学校が翻訳し、学生たちに配布したものだ。「海軍作戦を研究して教訓を求めると欲する」とある。「米国で見つかった日本の軍事機密「地図」14点 | ナショナルジオグラフィック」では、日本軍が作っていた近隣諸国の地図も見ることができる。

地図は嘘もつける。この画像は『地図の進化論 地理空間情報と人間の未来』にある、ドナルド・トランプが2016年の大統領選でヒラリー・クリントンに勝利したときの地図だ。

黒がヒラリー、白がトランプ。上の地図では白の面積が大きく圧勝であるように見える。下の地図は各州の選挙人の数に面積を合わせて形を歪めた地図で、こうしてみると拮抗していたことが分かる。実際、538の選挙人のうちで74人差の勝負であり、死に票も全て数えた場合の総得票数ではヒラリーのほうが多かった。

また、【翻訳】地図にはないけれど、われわれはここにいる。 | Graphia という記事に見られるように、地図を作るということは、文化、歴史、民族のあり方などを包含するものであって、そこに住む者ではない外部の者が特定の目線で観察し、地図を作るということは暴力、侵略、戦争などと簡単に結びついてしまうものだ。

ミクロネシアの Stick Chart
Marshallese Stick Chart

この画像はミクロネシアの島々で暮らしていた人々が使っていた地図だ。棒は波のパターンと潮流を示し、貝殻は環礁や島々を表している。

この海図を使うことで、航海者は、何千キロもの海を、方位磁石、天体観測機器を持たずに迷わずに渡ることができた。これを見ると、海の人々の世界認識、何が大事で実用的だったのかが分かる。地形ではなく、海の流れの形が大事だったのだ。

同時に、私たちがイメージする地図を現地に当てはめてしまうときに、彼らの世界の文化、歴史、認識が失われてしまうこともはっきりと分かる。

この記事を書いたDavid Garciaが以下のように書いている。

If you are a mapmaker, then ask yourself, “who are you making maps for?” and “who are you making maps with?” More importantly, who is leading your mapping?

地図の作成者が自らに問うべきは「誰のために地図を作るのか?」「誰地図を作るのか?」である。さらに大事になのは、「地図の作成をリードしているのか誰か?」である。

David Garcia, The Maps may be Missing, but We are Still Here – A Year of Blogs – Dec 2020

地図は、過剰な管理、戦争、フェイク、文化的な侵略といったリスクもある。であれば、なんのために地図を作るのかを考えないといけない。

デジタル地図の進化

デジタル地図は、社会のDXにおいて中核的な役割を果たすべき存在だ。この記事は、「ベクトルタイル アドベントカレンダー 2021」のひとつだが、ベクトルタイルという地図の技術は、暗号資産におけるブロックチェーン、AIにおける深層学習、3Dプリンタを可能にする材料科学のように、重要で革新性のある技術だと思うようにもなった。

下に貼り付けた地図は、Geolonia 代表の開発者、宮さんが公開しているサンプルの1つで、中央にあるバッテンが、どの行政区にあるのかをリアルタイムで表示するものだ。背景にある地図を動かすと、表示されている場所が東京都千代田区なのか、京都府京都市右京区なのかがわかる。

See the Pen @geolonia/open-reverse-geocoder by Geolonia (@geolonia) on CodePen.

この例はシンプルだし、グーグルマップでも分かるじゃんと思われがちなのだが、やり方やその拡張性が全然違っている。ベクトルタイルの構造をうまく利用しているし、コンピュータに解釈できるので用途がものすごく広い。

デジタル地図が、石、粘土、紙、お皿の地図と違うのは次のようなところだ。

  • 掲載できる情報量が無限:
    世界中の情報をいくらでも載せられる。昔の地図は知らなかったから、あるいはスペースがなかったから描けなかったのだが、今は描けないものがあるとするとそれは暇がないから
  • 常に最新の情報:
    建物が増える、地名が変更されるといった事実を常に反映できる
  • インタラクティブ:
    ドラッグして表示エリアを変える、ズーム、回転、斜め表示という基本的な動きに加えて、クリックして情報をコピーするとか、何を表示するのかフィルターをかけるなど、触る、操作するといったことが可能
  • 機械判読性:
    AI、ソフトウェア、ドローンなどが読むことができる。たとえば飛んでいるドローンが人口密集地帯や空港に入らないようにするなど、人間だけではなく機械も読むことができる
  • インターネットに繋っている:
    即時性、更新性、参加可能性、コミュニケーションなど、インターネットが可能にすることはすべて地図でも可能になる
機械判読性。左は人間が見る地図。右は機械が読み取る地図。ベクトルタイルでは地図にあるデータはすべてコンピュータにも読める。緯度経度、日本語と英語の表記、カテゴリなどが読める。データを増やせば、リアルタイム混雑情報の提供や、目の見えない人のための聞く地図も実現できそう。

次の画像は、Geolonia のミッションの説明スライド。

右側には地球。陸地があり、建物があり、電車が走り、雨が降り、私たちの暮らしやビジネスという現実がある。これらの現実の状態は、コンピュータには解釈ができない。そこで、地形、行政界、建物、AEDの位置などの静的なものから、人々の暮らし、ビジネスのあり方、潮位や雲の場所といった動きのあるものまで、現実をデジタル情報にする。そうすることで、機械にも世界を理解できる。

似たようなビジョンは他のデジタル地図のベンダーにもある。

To enable a digital representation of reality to radically improve the way the world moves, lives and interacts.

現実をデジタルで表現することで、世界の動き、生活、交流の方法を抜本的に改善する。

Location Technology | Autonomous World | About Us | HERE

Esri pursues mapping and spatial analysis for understanding our world with visionary products and services that define the science of GIS.

Esri はマッピングと空間分析を追求し、GISの科学を定義する先見性のあるプロダクトとサービスで、私たちの世界を理解しようとする

Esri Mission, Vision & Values | Comparably

We’re building the live location platform for a hyper-connected and automated future. Location is the coordinate system for everything, and our decentralized network of sensors transforms live data into the pulse of our planet.

ライブ位置情報基盤を構築し、極度に相互接続され自動化された未来を実現する。位置情報は、あらゆるものの座標系であり、私たちの分散型センサーネットワークは、ライブデータを地球の鼓動に変換する

Mapbox | Company

Here, Esri, Mapbox はデジタル地図の技術の先行企業だが、世界観はどこも似ている。世界をより正しく、より多く、より速く認識するためのデジタル地図を作り、分析し、自動化し、私たちの判断、機械の利用方法、生活を改善しようとしている。

大量の事実を一度にまとめて表現し、機会で分析、自動化することもできるようになっていくから、デジタル地図の顧客は不動産、物流、保険、小売、政府・行政、メディアと幅が広い。

扱うデータにはリアルタイムのセンサーの情報も含まれる。Geoloniaでは男木島でもスマートアイランドの取り組みでセンサーを活用しているが、人間の認識や知識を大きく変えられるかもしれない仮設を検証している。人は今まで一度に、大量の、離れた場所の事実を見ることはできなかったし、意味づけされたデータの可視化も限られていた。白雪姫の魔女が持っている魔法の鏡をたくさん持っている状態で魔法みたいだと思う。

離れたところから災害の現場を見ることもできるようになった。下のツイートは熱海の災害現場を3Dにしたものだ。複数の視点から撮影された画像や映像があれば、3Dの映像を作って角度を変えたり中を飛び回ったりできる。

まとめ: 共感、位置情報の民主化のための仕事

地図は、人が認識した世界を1枚に表現したものだ。地図は、意図や目的を達成することができる。地図は嘘をついたり、人を支配・管理し、騙すこともできる。大昔から国を作ったり、地球を航海したり、戦ったり便利にするために人間は地図を使ってきた。デジタル化や技術開発が進む地図は、より多くの表現方法で大量の事実を示すことができコンピュータとインターネットにも接続される。より力を持つ。だから「誰のために地図を作るのか?」「誰と地図を作るのか?」を地図を作る人は考えないといけない。なんのために、誰のために、誰と地図を作るのか。自分が作るなら、どうやるのか。

デジタル地図が高度化した世界でできることにはどんなことがあるか、友人とディスカッションしていたときに「共感のための地図」と言われて感銘を受けた。ある人に見えている世界を共有することは、その人の事情、感情などを共有することができるというのだ。新しい事実を見たり、その中を歩き回ることで、ニュースを超えた理解をし、他人事からひとつ引き寄せて考えることができるかもしれない。

IoT、人工知能、ビッグデータといった技術によって実現しつつある未来のことを考えるとき、いつも非人間的で、管理、中央集権的といった危なっかしい世界観しか描けなくて困っていた。システムが全体を最適化するためだけではなく、新しい事実や見えなかった意味を見せることで、自分が世界や他者をより理解するための地図というのはいいコンセプトかもしれない。見たい、知りたい、分かりたい!をやればいいのか、と思った。

Geoloniaでは、UNVT(United Nations Vector Tile Tool Kit. 国連による、誰でもデジタル地図を使えるようにするためのオープンソースのツールを揃え、開発しているプロジェクト)に参加している。今の役割は、地図のデザインをより簡単にするためのツール、Charitesを提供しオープンソースで開発を継続することだが、その先の目標としては地図のデザインの多様性がさらに上がることを期待している。特に、アニメ、浮世絵、かわいいなどの世界に影響を与えた価値観を生み出した日本での地図デザインが変わっていくといいな、と思っている。

デザインの領域以外でも、簡単さや便利さを上げることで、自分、他者、個人を理解したり表現したりできるツールを増やしていくことが仕事なのだ。一周まわって普通の結論になった。デジタル地図の業界に入って1年、まだまだ先は長いのだが、引き続き大局観も持ってまずは地図をより多くのケースで使いやすく開発者や企業に手渡していく価値を追求していこうと思う年末でした。

では、みなさん良いお年を。

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